専門ライターなどが人力で行う文字起こし(またはテープ起こし)の仕事がなくなると聞いたら、この仕事で収入を得ている人には衝撃的なことです。でも、本当にそうなのでしょうか。音声のテキスト化を自動で行ってくれるという音声認識ソフトと、文字起こしの仕事について取り上げてみました。
文字起こし(テープ起こし)と音声認識技術
文字起こし(テープ起こし)の仕事について
音声を人の耳で聴いて文字にする
いま、この記事を読まれているのは、文字起こし(テープ起こし)の仕事をされている方、これからやってみたいと思っている方、あるいは文字起こしを業者に発注しようか検討されている方もおられることでしょう。
まず、作業者が行う、つまり人力の文字起こしについて、基本的なことから押さえておきたいと思います。
文字起こし(テープ起こし)とは、会議、インタビュー、対談、座談会、講演、講義などを録音した音声を、作業者が自分の耳で聞いて、文字(テキスト)に起こすことをいいます。
人力の文字起こしは時間がかかる
文字に起こすといっても、長時間にわたり人が話した内容を起こすわけですから、当然ながら納品文書はそれなりのボリュームになります。1時間程度の録音音声を文字に起こすと、Word文書の標準的な書式設定でしたら8~12ページぐらいになります。
また、1時間の音声を文字に起こすには、音声にもよりますが5~7時間ぐらいはかかります。文字起こしに慣れていない方、タイピングが遅い方、他のお仕事などもあり忙しい方ですと、1時間の音声を起こすのでさえ数日かかることも珍しくありません。
つまり、人力による文字起こしは、非常に手間と時間がかかる作業といえます。そうなると当然、AIや音声認識ソフトを使って、文字起こしを自動あるいは時短できないか、という発想になります。この点については、以下でくわしくご説明します。
音声認識と文字起こしについて
多種多様な録音に音声認識は対応できるか
音声の文字起こし(テー起こし)については、これまでは専門のライターなど人の耳で録音音声を聞いて、人力で文字に起こしていました。
しかし昨今は、スマートフォンの音声検索などをはじめ、音声認識の技術が発展してきているため、徐々に音声認識ソフトなどの利用も進みつつあります。
ただ、人が語った話の録音音声というのは、話し方、音声内容、録音状態、録音時間など、じつに多種多様です。そのため、音声認識ソフトを使った文字起こしの精度や効率はまだまだ完璧とはいえません。
「音声の直接入力」と「録音音声」のテキスト化は違う
ここまで読まれた方の中には、「でも、音声認識からテキスト化する精度はかなり高くなっていると聞いたけど」という方もおられるでしょう。
確かにそのとおりなのですが、世間でいわれている音声認識というのは、「音声の直接入力からのテキスト化」を指していることが多いです。
たとえば、スマホに向かって利用者自身が語りかけたり、パソコンにマイクをつなげて話した言葉をテキスト化したりする場合です。つまり、音声を直接入力して、それを音声認識ソフトによりテキスト化しているわけです。
一方、すでに録音された音声データを、音声認識ソフトを使ってテキスト化するするということもあります。じつは、いわゆる文字起こし(テープ起こし)というのは、この録音音声からのテキスト化がスタンダードになっています。
現状ですと、この「録音音声からのテキスト化」については、まだ実用レベルとしては厳しいといえます。ただし、録音状態が非常に良い音声であれば、テキスト化の精度は高まります。
さらに、録音音声からのテキスト化には、対応していない音声認識ソフトもまだまだ多いです。録音音声のテキスト化やソフトについてご関心のある方は、下記の記事もご覧ください。
人力による文字起こしの仕事はなくなるか
長年、文字起こし(テープ起こし)の仕事をしていると、これから文字起こしの仕事を始めてみたいという方から、相談を受けることがよくあります。
じつは、かれこれ10年以上も前から私は、文字起こしの仕事をしたいという方に「この仕事は人間がやらなくても、いずれ自動でできるようになるから将来性はないよ」と言ってきました。同業者の間でもこうした声はよく聞かれます。
では、実際に文字起こしの仕事がなくなったかというと、少なくとも当事務所や知り合いの同業者にも、いまだに多くの文字起こし依頼がくるというのが現実です。つまり、「将来性はないと思う。でも相変わらず仕事はくる」といったところでしょうか。
大きな流れとしては音声認識技術の活用により文字起こしの自動化が進むのは間違いないでしょう。しかし、人力による文字起こしがすぐに無くなるかというと、まだ先のことかもしれません。
正直、文字起こしのパラダイムシフトが今後どう進むのか、どれくらいのスピードで変化するのか、まだ誰にも正確な予測はできないのではないでしょうか。
文字起こしという名称について
デジタル音声がメインになったことで
文字起こしという名称についてですが、かつてはカセットテープに録音された音声がメインだったので、「テープ起こし」と呼ばれました。
しかし現在では、ICレコーダー(ボイスレコーダー)で録音されたデジタル音声を対象にしたテキスト化がふえています。テープではないので「文字起こし」「音声起こし」といった名称も普及してきました。
また、録音機器のICレコーダーですが、スマートフォンに内蔵のボイスレコーダーやアプリで録音される方も年々増加しています。
デジカメの専用機が減ってスマホのカメラで撮影する人がふえたように、ICレコーダーの専用機もいずれはスマホ内蔵の録音に取って代わるのではないでしょうか。
音声認識なら「起こす」より「変換」か
さらに、前述した音声認識も普及してきていますから、これも名称に影響してくることも考えられます。音声認識で「テープか?」と感じる人が一層ふえるかもしれません。
あるいは、音声認識によるテキスト化ですと「起こす」というより「変換する」というニュアンスの呼び名のほうがしっくりくる、なんていう人もいるでしょう。「音声文字変換」あたりが普及したりするかもしれませんね。
それでも根強い「テープ起こし」
そうは言っても、長年愛用されてきた「テープ起こし」という名称はもはや記号化され定着しているため、いまだに「テープ起こし」という呼び方は根強く残っています。
インターネット上でも「テープ起こし」というキーワードで検索される方が今も多いこともあり、当事務所でも「テープ起こし」と「文字起こし」を併用しています。
もし、どこかの業者に文字起こしを発注されるときは、上述したような類似の名称のどれを使用してもまず大丈夫です。
一押しの名称が業者によってあるでしょうが、いろいろな呼び方が並立していること自体は、この業界にいる者ならだれでも承知しています。
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佐藤編集事務所の文字起こしサービスについて
私ども佐藤編集事務所では文字起こしの依頼を全国から受けています。依頼者はさまざまで、各地の自治体、大学、企業のほか、様々な公的・民間の団体、さらに自営業者、士業、個人まで大変幅広い業界・業種・分野から発注があります。
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