対談やインタビューなど会話で構成された音声内容のテープ起こし作業をしていると、よく出てくるのが話者の「相づち(相槌)」です。相づちはすべて文字化すべきなのか、削除してもいいのか、その処理について考えてみました。
相づち(相槌)とテープ起こし
インタビューや座談会などの音声に多い相づちについて、日々、様々な音声のテープ起こしを行っている佐藤編集事務所に在籍する専門ライターが、対処法などをご案内します。
相づちを忠実に文字化するとどうなるか
テープ起こし作業にとっては邪魔者?
「相づち」は会話中に、相手の話に合わせて入れられる間投詞です。インタビューや対談など、会話の音声をテープ起こししているときには多かれ少なかれ、相づちはほぼ確実に出てきます。
相づちは相手の話を引き出したり、会話のテンポをよくしたり、あるいは「ちゃんとあなたの話を聞いていますよ」というメッセージにもなります。聞き上手と言われる人は大抵、相づちが上手だといわれます。
しかし、テープ起こしで音声を文字化する際には、相づちはときに邪魔者になることもあります。
たとえば、話している本人は気づいていないかもれませんが、会話をしている最中、頻繁に相づちを打ち続けていることはよくあります。それを聞こえたまま文字にしてみると、どうなるでしょうか。
過剰な相づちを文字化すると
会話中の相づちを過剰と決めつけるのは失礼かもしれませんが、下記のように文字にしてみると「ちょっと多いな」と感じるのではないでしょうか。
A「昨日は東京駅から新幹線に乗りまして」
B「はい」
A「昼頃に」
B「はい」
A「新大阪駅に着いたんです」
B「はい、はい」
A「それで急いでいたものですから」
B「うん」
A「電車の中に」
B「うん」
A「帽子を忘れてしまいましてね」
B「はい、はい」
Bさんの相づち「はい」や「うん」によって、Aさんの話が細かく分断されていることがわかります。2人の会話の流れを音声として耳で聞いている分には、相づちはさほど気になりませんが、文字に起こしてみると、読みづらい文章になってしまいます。
「相づち」への対処について
「相づち」を「ケバ取り」する
そこで、こうした過剰な相づちをテープ起こしで文字化する際に随時、取り除きながら起こしていくと、文章として読みやすくなります。
テープ起こしにおいて、話の内容と関係のない余計な言葉や声を取り除くことを「ケバ取り」といいます。過剰な相づちを削除するのもケバ取りの一つと言っていいでしょう。
もちろん、上掲の会話例に出てくるような相づちは、すべてが不要というわけではありません。どこまで削除するか、あるいは残すかは、テープ起こしの目的にもよりますし、実際には作業にあたる者の判断になります。
どこまでケバ取りするか
テープ起こしする目的、話の内容、話者の感情、心の動き、会話のニュアンス、起こした文章の読みやすさなどを総合的にとらえて、作業しているその場その場で瞬時に判断します。
これは正解のない作業ですし、いちいち熟考している暇はないので直感的に対処することになります。したがって、テープ起こしライターの個性も出ますし、力量が問われるところでもあります。
逐語起こし(素起こし)における「相づち」は
「ケバ取り」とは逆に、録音音声を聞こえた通りに文字化することを「逐語起こし」(素起こし)といいます。
会話分析の研究用や裁判提出用などのテープ起こしに用いられます。逐語起こしでは、文章として読みづらくなっても正確に文字化することを優先します。
ただ、逐語起こしであっても、目的によって、「完璧に1字1句正確に」ということもあれば、「文章としてあまりにも読みづらくなるような箇所は、削除・修正してもよい」という場合もあります。
たとえば、話し手(インタビュイー)の発言を正確に文字化してほしいので逐語起こしを依頼するような場合、聞き手(インタビュアー)の相づちは、むしろ邪魔になってしまうことも少なくないです。
ですから、あくまで基本は「1字1句正確に」ですが、場合によっては逐語起こしといっても、相づちも適宜、省いたほうが依頼者のニーズに沿っていることもあるわけです。
なかなか、テープ起こしの作業前にどこまで文字化するかを決めるのは難しいですが、業者などに外注するようでしたら、事前によく打ち合わせしておくとよいでしょう。
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